2018年11月 11月の山 |
11月1日苗場山(2145m)に出掛けました。最短コースの小赤沢を登る計画で前日に三合目の駐車場に車を止めて車中泊。 朝4時窓の外を見るとドサドサと雪が降っていました、まさか積もるとは思いませんでしたが、かなりの急斜面の林道を登った 事を思い、慌てて下の集落近くまで高度を下げて様子を見る事に、結局みぞれ混じりの雨は止む気配はなく登山は中止しました。 この時期の登山は雪に追われるイメージで、判断を誤ると思わぬ事故につながる可能性があります。無理をせず次の機会を 楽しみに残して紅葉見物としました。秋山郷の渓谷の紅葉はややピークを過ぎていましたが素晴らしいものでした。とくに中津川 渓谷の対岸に聳え立つ通称、石落の大岸壁に張り付いた紅葉は見事です。 |
玉見公園からの眺め、柱状節理の大岸壁に紅葉が映えます。 |
11月3日 信州登山案内人の研修 |
山岳ガイドの資格の一つである信州登山案内人の 研修に参加しました。 |
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能力向上研修で資格更新のための義務研修となります。 別会場の座学と共に案内やレスキューの技術を講師の 指導のもと自然地形を利用して確認を行います。 |
日頃やっていないとすぐ忘れてしまうロープワーク、今回は新たな技を学びました、参加者の皆さまお疲れ様でした。 |
2018年10月7日~10日 裏剱縦走 |
ガイドの仕事も落ち着きシーズン終わり頃、雪に追われるようにプライベート山行が恒例となりました。 今回は裏剱の縦走です、初日は立山室堂から別山乗越を越え剱沢キャンプ場泊です。天気予報が少し ずれ雨模様となりました、こんな日はライチョウがお出迎え、冬に備えて少し冬毛の白が目立っています。 |
剱沢キャンプ場、雨も上がり剱岳が姿を表して来ました、聞けば昨日は台風の接近による 強風の為、テントが張れなかったようです。明日からの天気を気にしながら寝袋に潜り込みました。 |
10月8日快晴、ド~ンと聳え立つ剱岳(奥)と前剱、これから二股吊橋まで長い剱沢の下りが始まります。 |
剱澤小屋から剱沢に降り一時間ばかり 夏道を沢沿いにへツルと雪渓が現れます、 この時期、朝はカチカチに凍っていて 軽アイゼンを装着、推奨アイティムです。 |
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夏道の高巻きもありますが迷わずアイゼンで雪渓へ。 |
左岸に平蔵谷と長次郎谷を見上げ 久々の雪渓歩き楽しみました。 |
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日本三大雪渓の一つと言われる 剱沢雪渓も長次郎出会いを過ぎると 雪も切れ再び夏道の下りとなります。 小屋閉めも近い真砂沢ロッヂが朝日 を浴びて暖かそうです。 |
危うい足場のクサリ場通過。 | |
潰さないように持ってきた葡萄、美味しい! |
剱沢の下りもここまで、春スキーでは 三ノ窓、小窓雪渓への目印となる近藤岩、 ここから先は剱大滝、十字狭へと続き 立ち入ることは出来ません二股吊橋は 今日で外される予定でもう戻ることは 出来ません。 |
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二股吊橋から三ノ窓雪渓が その姿を現しました。 |
吊橋を渡ると仙人新道の登りが始まります。 | |
快晴の青い空にカエデの紅葉が映え本日当たり! |
…………! |
三ノ窓雪渓と裏剱 |
仙人新道のベンチからの絶景 | |
小窓雪渓、以前、スキーで剱沢を 滑り、小窓から西仙人谷を番場島 まで滑った記憶がよみがえりました。 剱の平蔵谷、長次郎谷、三ノ窓、 小窓雪渓はいずれも氷河として認定 されています。 |
長い急登から解放され、開けた仙人峠から後立山連峰の眺め、佇む仙人池ヒュッテ。 |
仙人峠から約30分で池の平小屋 テントOKを確認する。 |
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池の平小屋が最低鞍部に、 小窓に続く旧鉱山道、池の平山 下って大窓、白ハゲ、赤ハゲと 剱岳から連なる北方稜線。 |
大正の時代から昭和にかけモリブデンを 採掘した拠点としての歴史をルーツに持つ 池の平小屋、よくもこんな山奥にとつい 思ってしまいます。 |
小屋閉め真っ最中、忙しい中 ビールや水を分けて頂き感謝、 最終的にテント5張りでした。 |
テントの周りをよく見るとモリブデンが砂に混じっています、今で言うレアメタルです、これとクロムの合金が クロモリ鋼で強度と加工しやすい素材、山ではおなじみハーケンやアイゼンの素材として知られています。 実際は大正、昭和の時代、戦争とのかかわりで武器を作る必要上何としても欲しかったものと想像できます。 |
10月9日 5時出発 今日は8時間あまりの長い行程となり、 昨日登った標高差よりさらに下降して 黒部川の川底までの下りとなります。 |
ピンッと張りつめた空気の先、雲海から顔を出した鹿島槍と爺が岳 |
仙人峠から15分ほどで仙人池ヒュッテ 有名な池に映る裏剱は見えるのでしょうか? |
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霜に縁どられたチングルマの葉 |
残念ながらガスが湧いて来て裏剱は見えません、 あとはひたすら仙人温泉まで沢筋を下り、雲切新道を 黒部川の仙人ダムまで降りる行程です。 |
仙人谷に陽が差し紅葉が見事です、遠望する後立山の峰々が霞んでいました。 |
雲切新道に至る登りから、下ってきた仙人谷と仙人温泉の源泉、仙人温泉小屋は本年は休業中でした。 |
あまりにも長く急な雲切新道、ようやく谷底に 人口物が見えて来ました、送電線と山の中に 掘られた発電設備、黒部川まではまだまだ! |
仙人谷に架かる橋、仙人ヒュッテが小屋閉め して下山すれば冬に備え橋は撤去されます。 |
黒部川です。長い梯子を下れば仙人ダムはすぐ。 | |
仙人ダムの施設内の一部が登山道となっていて 黒部ダムからの下の廊下ルートとここで合流します。 トンネルを歩いているとむせかえるような熱気を 感じました。そうだ!ここはと、思い出したのが 吉村昭の小説「高熱隧道」の阿曽原谷から仙人ダム 全長904mの軌道トンネル掘削を描いた舞台と なっています。 |
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仙人池から仙人ダムの急傾斜を下降する途中の 仙人温泉にはごうごうと蒸気を吹き上げている場所 があり、この下にトンネルを掘るとなると…。 最高岩盤温度166度の中、233名の人名損失を 出してでも黒部第三発電所を完成させた裏には モリブデン鉱と同じく当時戦争に突き進んだ日本に とって何とでも確保したかった電力、そのためには 国家は急場をごまかし、法律を無視する。という 背景を周到に描いているとされています。 |
下の廊下から急坂を下れば阿曽原温泉小屋 長い一日でした、テントを張って温泉に浸かり 後は、ビールで乾杯、お疲れ様! |
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阿曽原テント場 温泉、水場、トイレ完備で快適そのもの。 山小屋関係の知り合い、ガイド仲間など おなじみの顔に出会い楽しいひと時を 過ごすことができました。 |
10月10日 最終日 5時出発 ツアーグループも続々と早立ちです。 |
気になるお天気、今日一日もってくれると良いのですが。 |
下の廊下後半の始まりです。 |
見事な落差、折尾谷の滝 | |
旧日電水平歩道の歴史 |
岸壁に掘られた水平歩道はどこまでも続いているようです。 |
山襞に沿うように掘られています。 |
岩には針金番線が這わせてあり 良く整備されています。 下の廊下一番の見どころ(大太鼓) の展望台、欅平が遠望出来ますが まだまだ先が続いています。 |
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200m下に流れる黒部川 |
大太鼓を慎重に通過 |
ザックが岩に当たりバランスを崩さないように通過、落ちたら終わり! |
志合谷に掘られたトンネルです、中には水が流れていて 岩盤を素掘りしてあり、以前来た時には頭をぶつけて痛い 思いをしました。ヘルメット推奨、ヘッドランプ必携。 |
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トンネル内、全体に水、壁が光っている(・・? |
志合谷トンネル入口です、全長150m |
欅平トロッコ列車の駅に到着 | |
長い行程を何とか歩き通し大満足です。 それにしてもトロッコ電車の寒かった事。 |